
免許を取った時は車に全く興味がなかったのだが、レンタカーで乗ったZN6型の86にすっかり惚れてしまった俺は2020年12月に前期型のZN6型86を納車する。
その時の俺はAT限定免許で、ATの86を購入したわけなのだが、車にのめりこむほどやはりMT車に乗ってみたい、という気持ちが非常に強くなった。
結果2024年の3月に限定解除に至ったわけなんだけど、AT限定解除は非常に難易度が高いと巷では言われている。
実際のところどうだったのか、どんなことを教習ではやるのかを俺の体験をもとに解説する。

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この記事の目次
AT限定解除は難しかった

まず結論としてAT限定解除は非常に難しかった。
基本土日だけとはいえ毎週のようにATの86は運転していたので、運転自体には慣れていると言ってよいと思う。
しかしながらブレーキを放せばクリープで進むATとは異なり、左足でクラッチ操作、左手でシフト操作を右手右足の操作に加えて実施しなければならないMT車はあまりに別ゲーだった。
その勝手の違いをたった4時間の教習で乗り越え、修了検定を受けなければならないのだから難易度は非常に高いと言っていい。
直近でMT車に乗る機会がない人には全くお勧めしない

限定解除の教習は4時間しかないので、1時間ごとに期間が空くと間違いなく忘れる。
さらに、晴れて限定解除できたとしてもMT車に乗る機会がなければ絶対に忘れる。
人間短期的に身に着けた技能は継続しなければあっという間にできなくなってしまうので、
限定解除をした後すぐにMT車に乗る機会がなければ本当におすすめしない。
ちなみに俺は自分を追い込むために、MTのRX8を契約してから教習所に通った。
AT限定解除は時間と金の無駄

やって思うのは本当にAT限定解除は時間と金の無駄。当たり前だけど最初からMTで取ってれば全く使う必要のなかったお金と時間を使った。
俺のような絶対MTに乗りたい!と思う変態・物好きでもなければ絶対におすすめしない。
2025年4月からMT免許は4時間の教習のみに変更

ちなみに2025年4月から、教習のカリキュラムが変更されて最初からMT免許を取る場合もAT車31時間+MT車4時間の計34時間となった。
路上教習もAT車で実施。
つまり、従来の限定解除をするのとほぼ同じカリキュラムでやることになる。
この記事は最初からMT免許で取ろうと思っている人にも参考になるはず。
初日は入校手続きと適性検査で終了

まず初日は窓口に「限定解除したい」と伝えて書類を何個か書いて金を払う。
そしたら原簿につける写真を撮られて教習予約システムとか原簿の受け取り方とかを教えられる。
教習15分前までに原簿を受け取り出来てないと教習が受けられないらしい。
で、初回教習を受ける前に適性検査の受講が終わっていないとハンコがもらえないらしい。
ので、その日の夜に再度訪問して適性検査を受けた。
最初に免許取った時とやることは一緒。マジで時間の無駄。
初回教習:発進と後退、ギアチェンジ

いよいよ初めてMT車に乗る初回。初回教習はとにかくクラッチをつないで発進と後退、ギアチェンジをマスターすることに1時間を使う。
多くの限定解除民はここで絶望に叩き落されることだろう。
俺は土日だけとはいえほぼ毎日車に乗っていたし、長時間ドライブの経験もそれなりにあったから「他のやつとは違うぜ」と自信を持っていた。
他が免許取得を目指す大学生ばかりだったので、いわゆる「強くてニューゲーム」的な感覚だったんだ。
そしてその自信は見事にへし折られることになった。
AT | MT | |
1 | ブレーキを踏む | ブレーキを踏む |
2 | Dに入れる | クラッチを踏む |
3 | サイドブレーキを下す | 1速に入れる |
4 | ブレーキを放す | サイドブレーキを下す |
5 | ブレーキを放す | |
6 | アクセルを煽る | |
7 | 回転が落ちないうちに半クラッチを作る | |
8 | クラッチがつながったらアクセルを放す |
上記のとおり、AT車とMT車では「発進」という工程1つ取ってもやることの量が倍違う。
強くてニューゲームのつもりがまるっきり別ゲーをニューゲームでプレイしてた。
AT限定民とMT民では「アクセルペダルを踏む」の意味が違う

限定解除の難しさの1つが「アクセルペダルを踏む」意味への認識の違いにあると思っている。
AT車はクリープがあるので、車を発進させるという行為にアクセルペダルを踏むという工程は絡まなくて、
「車を加速させる」ためにアクセルペダルを踏む。
しかしMT車の場合、アクセルペダルを踏んで回転を上げないとエンストしてしまうし、クラッチをつながなければアクセルペダルをいくら踏んでも車は進まないし加速しない。
つまりAT限定民にとってはアクセルペダルを踏む=エンジンが唸る=車が加速するなので、「エンストしないためにアクセルペダルをあおる」
「エンジンの回転があがってエンジンが轟音で唸っている」という状態に潜在的な恐怖心がある。
この恐怖心を克服して認識を改めることが限定解除にとっての重要なハードルだな、と感じた。
クラッチ操作がなんとなくうまくいくようになったのは自分の車を持ってから

ちなみに半クラッチって何、クラッチがつながったって何、というのが分かったのは自分の車を持ってある程度運転してからだった。
教習所のたった4時間の中でここを完璧にマスターするのはまず無理。
なのでとにかく教習所の4時間は「クラッチは何秒踏む」「アクセルは2000回転まで煽る」「半クラッチは何秒続ける」という数値的な目安を作ってやっていた。
走り出してからはAT車と変わらない

一度発進さえしてしまえばAT車とほぼ同じ。ようやっと「強くてニューゲーム」感が出てきた。
教官の方にも「車線の真ん中しっかり走れてますね」「しっかり周りの車見られてますね」とお褒めの言葉をいただいた。
安全確認は改めて叩きなおされた

ちなみに安全確認については物凄く叩き直された。
左折時の巻き込み確認や車線変更時の目線など、「慣れ」でないがしろになっていた安全確認を改めて指摘されて気が引き締まった。
これは教習所に通いなおしてよかったと思ったところ。その日の帰路でもしっかり活かされた。
2回目教習:踏切通過・坂道発進
2回目の教習では踏切の通過と坂道発進をやった。
誰もがMT車最大の難所だと口をそろえる坂道発進がここで登場する。
クラッチ操作に慣れない間の坂道発進は鬼門

坂先ほどふれたとおりAT限定民はアクセルを煽って回転が上がる状態に無意識の恐怖を感じているので、
坂道発進のためにエンジンの回転が上がってエンジンの音が大きくなるのがまず慣れない。
そして坂道発進に失敗するとエンストを起こし、車は止まるどころか坂道の傾斜に従って後ろに下がってしまう。
この恐怖と焦りが坂道発進の難しさの根幹である。
さらに半クラッチを作った瞬間にサイドブレーキを下す必要があるので半クラッチを理解していない状態でやると本当に難しい。
ここも結局俺は「アクセルを3000回転まで煽る」「クラッチをじわじわ離して車が動いた瞬間にサイドブレーキを下す」という数値的な目安を作って突破した。
限定解除は自習が命

この辺りから自分の86に乗りながらMT車の練習をするようになった。
もちろんAT車だったからクリープがあるしペダルも2個しかないんだけど、クラッチがある想定で左足を動かしながらイメトレしていた。
教習が4時間しかないのでとにかく自習が大事だった。
YoutubeでMT車教習の動画も見まくった。
3回目教習:S字・クランク・方向転換
3時間目はS字とクランク、そして方向転換をやった。
S字とクランク、方向転換は半クラッチを作って微速で前進・後退をすることの練習が中心で、「タイヤや車体の感覚はある=脱輪や接触は一切しない」という前提の下で進む。
たぶん普段車に乗ってない人はこの教習で追加教習を食らうのかなと思った。
アクセルを煽りながらクラッチを操作する難しさ

ここでも壁になるのはアクセルを一定の回転にキープしながら半クラッチを作る難しさ。
AT車はクリープで微速前進・後退ができるので右足はブレーキペダルの上に固定で良いのだが、
MT車の場合はアクセルを煽らないとクラッチ操作しても車が動かないしエンストしてしまう。
もちろん危ないなーと思ったらブレーキペダルを踏まないと車は止まらない。
なので右足をブレーキペダルとアクセルペダルの上でせわしなく動かし続ける必要がある。
この仕様の違いにこの時間は苦しむことになる。
とても脱輪でつまずいていられるような余裕はない。脱輪や接触をしないことが当たりまえで教習は進む。
4回目教習:見極め
最後の教習となる4回目。ここでは今までやってきたことを一通り網羅して、修了検定に進んでいいかどうかの判断を教官にされる。
S字クランク方向転換はなんの問題もなく終わったんだけど、やはり鬼門は坂道発進。
成功率は2/3程度と何回やってもやっぱり一定失敗してしまう。
車が変わるとクラッチの感覚が変わる

クラッチはクラッチ板の減り具合によって感覚が変わるので、教習車が変わるとクラッチの感覚も変わってしまう。
そもそも運転技術がない奴が何言ってんだって感じだけど、運転技術がない初心者だからこそ道具が変わる影響をもろに食らってしまう。
前の教習車ではつながってたクラッチの深さでつながらなかったりする。この差が大きかった。
無事にハンコを受領。終了検定へ

それでもなんとか気合で乗っていき、無事にハンコを受領。修了検定に進むことになった。
ちなみに3回目と4回目は同じ教官だったんだけど、「君は運転自体は問題ないからMT車の操作さえうまくいけば大丈夫」と励ましをもらった。教えるのもうまかったしいい教官だった。
修了検定
いよいよ修了検定の日を迎えた。MT車の修了検定受講者は俺を含めて6人。
俺と同じ車両に割り当てになったのは3人で、1人は免許取得を目指す大学生で、もう一人は俺と同じ限定解除民だった。
俺の試験順は2番目だった。
同じ目標を持つ同士としての結束

これはATの免許を取った時もそうだったんだけど、検定の時は同乗している人全員が検定合格を目指す同士なので、謎の結束が生まれる。
「お互い頑張りましょうね!」みたいな会話がおそらく今後二度と会うことのないであろう人の間で交わされる。
この謎の結束が今回も生まれた。俺はこれが好きだったりする。
今回はMT車ということもあり、エンストしてしまった人に対して「大丈夫!」のような励ましの会話もあった。
意外とエンストは焦らなくて大丈夫

エンストは試験中にやると超パニックになるんだけど、意外と焦らなくてOK・
修了検定は70点以上で合格なんだけど、エンストに関しては
- 1回目は減点なし
- 2回目以降は1回目も含めて1回5点減点(つまりこの時点では計10点減点)
- 同じ場所で4回エンストすると走行不可扱いで強制試験終了(不合格)
というルールになっている。
つまり同じ場所で4回連続でさえやらなければ、6回まで試験でエンストしていいことになっている。
(もちろん他に減点があれば落ちてしまうが)
普段車に乗っている人ならMT車特有の要素であるクラッチとギア操作以外のポイントで減点されることはほぼないと思うので、
エンストしてしまっても焦らずに進めるようにすればOK。
無事一発合格、限定解除に至る

そうして俺は晴れて修了検定に合格し、無事に限定解除の資格を得た。
試験が終わったら修了検定の合格証明書的な書類がもらえるので、後日免許センターに行って所定の手続きを受ければOK。
免許の裏側に「●月×日 AT限定解除」の文言が記載されて晴れて公道MT車運転の資格を得ることになった。
学科試験はなし

ちなみによく言われるんだけど限定解除に学科試験はない。
修了検定だけ受けて合格すれば手続き可能なので安心してほしい。
MT車運転は限定解除してからが本番
さっきから何回も言っている通りMT車の運転技術をたった4回の講習+修了検定の計5時間でマスターするのはまず無理。
本番は限定解除して実際に公道でMT車に乗ってからとなる。
納車日はMT車に詳しい人に付き添いを頼もう

俺はエイトを買ったお店が自宅から40~50キロくらい離れており不安だったので、
MT免許を持っている友人に同伴を頼んだ。
友人がいることで道中エンストしても焦らずに対応できたし、運転のアドバイスなんかももらえたので非常に良かった。
最初からMT免許で取るべき
改めてにはなるんだけど、限定解除は本当に難しかったし時間も時間もつかうからよほどの物好きでない限り絶対におすすめしない。
最初からMT免許を取ればこの時間とお金は不要だったのだから。
MT車は難易度の高いゲームのような楽しさ

ただ苦労して勝ち取ったMT車はマジで楽しい。
教習で「別ゲー」という表現をしたようにAT車の良さとMT車の良さはまるで違う。
ある程度難易度があるほうがゲームは楽しいと思うんだけど、MT車の面白さはまさに難易度のあるゲームの面白さに近い。
回転がぴったり合ってシフトが吸い込まれた感覚は気持ちいいし、ブリッピングでなんのショックもなくシフトを変えられた瞬間はめちゃくちゃ楽しい。
時間も金もかかるけど、それでもMT車に乗ってみたいという熱意にあふれたあなたへ健闘を祈る。